試作レポート3


エフェクタ用フットコントローラ第3段。

ギターエフェクタはマルチ派なのですが、いいヤツはデカいし重い。
小さい安いやつなら軽いのですが、パラメーターやフットスイッチが少なすぎて実用上ちょっと…という両極端な状況かと思います。
ギターエフェクタトップブランドBOSSの旗艦機GT-100。
重量4.8kg、ケースやケーブルを入れたらエレキギター2本分の重さになろうかという難物です。

これを運用するには自家用車か体力か根性のいずれかが必要になりますが、いずれも持ち合わせていない私を救済するのが今回の企画です。

そこで取り出だしましたるところのGT-001。GT-100の宅録版で重量500g。
ステージでの使用に必要な部分をすべて取り払ったモデルです。

具体的にはパッチ切り替えフットスイッチ、バンク切り替えスイッチ、コントロールスイッチ、フットペダル、コントロールアウト、エフェクトループがありません。
唯一エクスプレッションペダルまたはコントロールインに使える端子が一つだけあります。
これらのカットされた機能を、なるべく重量を抑えつつ全て追加復元します。

まず外部コントローラを用意してパッチを切り替える手段ですが、MIDI INのようなコネクタがあるわけではないので、そこをなんとかしないといけません。
いろいろ調べたところ、GT-001はPCに接続するとオーディオインターフェイスとして以外にMIDIデバイスとしても認識されるようです。
このMIDIデバイスに対してプログラムチェンジを送ってやるとパッチ切り替えが出来るようなのです。
じゃあスタジオやステージで足元にパソコンをドカッと置くの?(笑)と一昔前であれば失笑を買っていたかもしれません。

そこで取り出だしましたるところのドスパラ製スティックPC。重量42g!
これでWindows10がサクサク動くんだから現代の技術はホントにすごい。
これにGT-001を制御するためのアプリを入れます。

フットコントローラ側基板。
パッチ切り替えだけではなくエフェクトループ×3、コントロールアウト×3、外部スイッチ端子(コントロールイン)×4を追加機能として持たせます。
個人的には外部エフェクトやアンプ制御などは必要ないのですが、スペック上でGT-100やMS-3を超えるための見栄です。
エフェクトループは物理リレーですので、昔のワウなんかでもいけるはずです。
あと各種機能をアサイン可能なファンクションキー×3。

完成。重量465g。
バンクのアップ/ダウンとパッチ切り替えスイッチ×4。
軽量化のためアルミ板金です。スタッドなども樹脂製のものにして軽量化を徹底。
勢いでシルク印刷も発注してしまいました。完全に趣味の自作の範囲から逸脱しています。

スティックPC上で動作する制御アプリとはUSBで通信します。
軽量化が主眼なのでインアウト以外はミニジャック。 コントロールアウトは念のため絶縁型コネクタです。このタイプはバラすときハンダをとらないといけないので面倒なんですよね。

制御アプリ画面。
パッチごとのエフェクトループ、コントロールアウトのON/OFFの設定と、ファンクションキーや外部スイッチの機能のアサインができます。
フットスイッチの1と2を同時に踏んだときなどにも機能を持たせることができるので、最大計10個のコントロールスイッチ操作が可能です。
アサインできる機能はWindowsシャットダウンやGT-001にコントロールチェンジを送る機能、あるいは後述の再生/停止機能などです。
コントロールチェンジをGT-001が受けたときはリバーブをオンオフするなどの設定はGT-001側で可能です。つまりコントロールインの機能になります。
あるいは4スイッチのうち、一番右のスイッチにコントロールチェンジを割り当てておけば、3パッチ + 1コントロールスイッチという運用も可能です。

ループとコントロールアウトのパッチごとのON/OFFステータスは自動保存されますので、ON/OFF変更のためにマウスやディスプレイをスティックPCに接続する必要はありません。 この画面上で操作が必要なのは、初期設定とスイッチに機能をアサインするときだけです。

前回のフットスイッチ2号機で私に好評だった、スイッチ1〜3は固定で4だけバンクアップダウンする機能も実装しています。
よく使うクリーン、リード、リズムなどのパッチは固定にして、飛び道具的なパッチは4に割り当ててそこだけバンク切り替えするという機能です。
今回はアプリ側での実装ですので、オンオフが可能です。
通常は4スイッチ×15バンクが利用でき、1〜3固定モードでは15パッチのみ選択できます。
15というのは1〜9、A〜Fという1桁での表示上の制限です。

最大4台のMIDIデバイスに対してプログラムチェンジ制御が可能ですので、ES-8などを追加してもパッチを同期させることができます。
このスティックPCについてはUSBポートが2つしかないので、USBハブとUSB-MIDIインターフェイスを介する必要がありますね。


これは後から思いついたのですが、GT-001はオーディオインターフェイス機能があります。というかそれが主機能でした。
WindowsPCとオーディオインターフェイスがあればこれはもう私の超専門分野じゃないですか。

とりあえず追加しましたるところの音声ファイル再生機能。
ステッィクPC内のドライブにコピーされたwavファイルの再生機能です。
たとえばバンク2のスイッチ3を踏んだらパッチ切り替えではなく、効果音を再生ということができます。
全てを再生に割り当てたら4スイッチ×15バンクの足操作ポン出し再生機にもなるということですね。
再生STOPやフェードアウトしてから停止という機能もアサインできますので、曲中の効果音だけでなく出囃子SEにも有用です。
効果音はギターアンプからギター音声と一緒に出してしまってもよいのですが、GT-001のRチャンネルからPA(DI)に送ることもできます。
この場合はGT-001の最終段にPANエフェクトを入れてギター音声がLチャンネルのみから出るようにする必要があります。前段でLのみにしても後段のステレオエフェクト音がRから出てしまいます。
効果音のほうをRチャンネルのみから出すのはアプリ側で選択可能です。

エフェクトループはYケーブルで接続します。
当然のことながら、GT-001の内部エフェクト間にインサートすることはできませんが、まあ外部エフェクトを使用するのは初段がもっぱらですからOKでしょう。

バッグに入れた状態でも2.4kg。GT-100本体の半分です。
先頃発売されたGT-1000と比べても圧倒的に軽量です。
機材だけならMS-3よりも軽量ですが、ボードやケーブルがかさむ分で惜敗。

GT-001もフットコントローラもUSBの5Vバスパワーで動作します。
外部エフェクトを追加するときは別途9V電源系を引かないといけないですね。

私は使用しないのですが、せっかくなので周辺機器も用意してみました。
まずエクスプレッションペダルですが、これはGT-001本体に接続できます。

市販品で最軽量と思われるSONICAKE Vexpress。重量250g。
あまりにもひどいカラーリングなので塗装しなおしました。
本体はABS樹脂製ですが、底板がスチール板だったので、これをABS樹脂板で作り直して重量227g。
思ったほどは減りませんでした。
スチールの底板は72gでABSのほうは8gなので計算が合いませんが、塗膜が予想以上に重いのか公式重量が違うかということになります。

コントロールスイッチ。重量64g。
FS-6の代わりですが、これはステレオミニケーブルでフットコントローラと接続します。
フットコントローラにはこれを2つ接続できます。

両方接続するとGT-100相当ということになります。
これをバッグに収納すると2.7kgになりました。


《総評》
目標重量よりかなり軽くできました。
使用上の難としては、起動に35秒、終了に8秒ほどかかることでしょうか。 オーディオミキサーやシンセサイザーも高級機になるとPC内蔵で起動に時間がかかるものが多いので、そういうノリで考えれば逆にカッコいいかもしれません。

今回は基板、筐体、マイコンプログラム、Windowsアプリのすべてが新規設計というフルコースになってしまいました。